今日のFLのメモは「『~から墓地に置かれたとき』という能力について」でございます。

カードが墓地に置かれたときに何か能力を発揮する、という能力は、MtGの世界では珍しくありません。
「~からいずれかの墓地に置かれたとき(置かれるたび)」「死亡したとき(死亡するたび)」という風に書かれている能力は、俗語で「PIG能力」と呼ばれています。Put Into Graveyardで誘発する能力、PIG能力。
一番よく見るのは、カードが戦場から墓地に置かれたときに誘発する能力でしょう。
Rancor / 怨恨 (緑)
エンチャント ― オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、+2/+0の修整を受けるとともにトランプルを持つ。
怨恨が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、怨恨をオーナーの手札に戻す。

最近のカードだと、クリーチャーが戦場から墓地に置かれたときの能力は「死亡したとき」と書かれています。(もっと言うと、昔のカードのオラクルも「死亡したとき」に直されています。)
Doomed Traveler / 宿命の旅人 (白)
クリーチャー ― 人間(Human) 兵士(Soldier)
宿命の旅人が死亡したとき、飛行を持つ白の1/1のスピリット(Spirit)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
1/1

《怨恨》と《宿命の旅人》は、ちょっと書き方が違いますが、誘発型能力の扱い方は全く同じです。
これらを、PIG能力の中でも「死亡誘発」と言います。

墓地に置かれたときなら、何処から来たのかなんて関係なく誘発する能力もあります。
Emrakul, the Aeons Torn / 引き裂かれし永劫、エムラクール (15)
伝説のクリーチャー ― エルドラージ(Eldrazi)
引き裂かれし永劫、エムラクールは打ち消されない。
あなたが引き裂かれし永劫、エムラクールを唱えたとき、このターンに続いて追加の1ターンを行う。
飛行、プロテクション(有色の呪文)、滅殺6
引き裂かれし永劫、エムラクールがいずれかの領域からいずれかの墓地に置かれたとき、オーナーは自分の墓地を自分のライブラリーに加えて切り直す。
15/15

戦場から墓地に置かれたらもちろん誘発するし、手札から捨てて墓地に置かれても誘発するし、ライブラリーが削られて墓地に置かれたときも誘発します。

PIG能力は他にも考えられますが、今回は上に紹介した2種類についてメモしていきます。

○ PIG能力のまわりで起こる色々

PIG能力は単純そうに見えて、実は結構難しいんです。

◎ 「《安らかなる眠り》があるとき、《怨恨》が破壊されました。これ、手札に戻る?」
Rest in Peace / 安らかなる眠り (1)(白)
エンチャント
安らかなる眠りが戦場に出たとき、すべての墓地にあるすべてのカードを追放する。
いずれかのカードかトークンが、いずれかの領域からいずれかの墓地に置かれる場合、代わりにそれを追放する。

これ、戻りません。

これは前回の記事「《安らかなる眠り》について」の復習です。
http://funloving.diarynote.jp/201304152155459874/
ここでは簡単な結論だけ書きます。詳しく知りたい人は上のリンクへどうぞ。

《怨恨》が破壊される場合、《安らかなる眠り》の置換効果せいで、《怨恨》は墓地に置かれる代わりに追放されます。
なので、《怨恨》の「戦場から墓地に置かれたとき」の能力は、そんな状況になっていないので誘発しない…ということ。

◎ 「《血の芸術家》と別のクリーチャー3体が居る状態で《至高の評決》が撃たれ、全てのクリーチャーが墓地に置かれました。これ、《血の芸術家》以外のクリーチャーの分もライフ吸える?」
Blood Artist / 血の芸術家 (1)(黒)
クリーチャー ― 吸血鬼(Vampire)
血の芸術家か他のクリーチャーが死亡するたび、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは1点のライフを失い、あなたは1点のライフを得る。
0/1
Supreme Verdict / 至高の評決 (1)(白)(白)(青)
ソーサリー
至高の評決は打ち消されない。
すべてのクリーチャーを破壊する。

これ、吸えます。

戦場を離れた時の能力は、指定されたパーマネントが戦場を離れた時、あるいはフェイズ・イン 位相のパーマネントがそのオーナーがゲームから除外されたことによってゲームから除外された時に誘発する。これらは、「[このオブジェクト]が戦場を離れたとき、…/When [このオブジェクト] leaves the battlefield,」、あるいは「[何か]が戦場から墓地へ置かれるたび、…/Whenever a [何か] is put into a graveyard from the battlefield,」と書かれている。(CR603.6c)
戦場を離れた時の能力(中略)については、そのイベントの直後ではなく直前のオブジェクトの存在や状態に基づいて誘発する。それらの能力が誘発するかどうかを判断するために、ゲームは「過去の状態を見る」必要がある。(CR603.6d)

・「戦場から墓地へ置かれるたび」って書いてある能力は、戦場を離れた時の能力として扱うよ。
・戦場を離れた時の能力が誘発するかどうかは、それが戦場を離れる「直前」のゲームの状態によるんだ。(普通は「直後」を参考にするんだけど、これは例外の1つなんだよね。後で詳しく話すね。)

《血の芸術家》のPIG能力は、「死亡するたび」(「戦場から墓地へ置かれるたび」と同義)と書いてあるので、戦場を離れた時の能力です。
これは、「クリーチャーが死亡する」というイベントの直前の状態によって、誘発するかどうかが決まります。

全てのクリーチャーが死亡する、というイベントの直前は、「《血の芸術家》と別のクリーチャー3体が戦場に居る」という状態でした。
つまり、「4体のクリーチャーが死亡した」というイベントは「《血の芸術家》が戦場に居る」という状態を参考に考えられます。

よって、《血の芸術家》のPIG能力は4回誘発する…ということ。

分かりづらい!

映画フィルムのコマを想像してみてください。

コマAには、《至高の評決》が全てのクリーチャーを破壊する直前の盤面が映っています。
隣のコマBは、クリーチャーが破壊された直後の盤面です。
つまり、コマAとコマBの間に、「全てのクリーチャーが墓地に置かれる」というイベントがありました。

《血の芸術家》の能力が誘発するかどうかは、コマAだけを見て考えます。
戦場に《血の芸術家》が居ますね。なので、《血の芸術家》のPIG能力は有効です。

もし仮に、コマBを見て考えるとしたら?
戦場に《血の芸術家》は居ません。なので、《血の芸術家》のPIG能力は、戦場にいないため無効という解釈になります。

◎ 「《引き裂かれし永劫、エムラクール》になった《クローン》が墓地に置かれました。これ、PIG能力はどうなる?」
Clone / クローン (3)(青)
クリーチャー ― 多相の戦士(Shapeshifter)
あなたは、クローンが戦場に出ているクリーチャー1体のコピーとして戦場に出ることを選んでもよい。
0/0

これ、誘発しません。
1つずつ見ていきましょう。

誘発型能力が誘発するかどうかは、どうやって決めるの?

通常、そのイベントが誘発条件を満たしたかどうかのチェックを行なうのは、イベントの直後に存在するオブジェクトについてである。その時点で存在する継続的効果は、その誘発条件が何であるか、また、そのイベントに関与するオブジェクトが何であるかを決定するために用いられる。しかし、誘発型能力の中には、特別に扱わなければならないものもある。戦場を離れた時の能力、パーマネントがフェイズ・アウトしたときに誘発する能力、すべてのプレイヤーが見ることができるオブジェクトが手札やライブラリーに移動したときに誘発する能力、オブジェクトが外れたときに誘発すると書かれている能力、プレイヤーがオブジェクトのコントロールを失ったときに誘発する能力、プレイヤーがある次元からプレインズウォークしたときに誘発する能力については、そのイベントの直後ではなく直前のオブジェクトの存在や状態に基づいて誘発する。それらの能力が誘発するかどうかを判断するために、ゲームは「過去の状態を見る」必要がある。(CR603.6d)

・誘発型能力が誘発するかどうかは、普通、誘発しそうなイベントの「直後」の状態を参考にするんだよ。ただ例外もあってね、さっきの《血の芸術家》はトクベツってことなの。(さっき「後で話す」って言ったことだよ。)

普通、何かイベントが起こったら、その直後のゲームの状態(コマB)を見て考えます。
ただし、《血の芸術家》の能力がそうであるように、例外としてイベントの直前の状態(コマA)を見るものがいくつかあります。

つまり、誘発型能力が誘発するかどうかは、イベントの直前か直後かの状態を参考に決めるけど、どっちにするかはモノによる…ということ。

じゃあ《引き裂かれし永劫、エムラクール》の場合は?

CRの文章の真ん中らへんに、イベントの直前の状態を見る能力が書いてあります。

(1)戦場を離れた時の能力
(2)パーマネントがフェイズ・アウトしたときに誘発する能力
(3)すべてのプレイヤーが見ることができるオブジェクトが手札やライブラリーに移動したときに誘発する能力
(4)オブジェクトが外れたときに誘発すると書かれている能力
(5)プレイヤーがオブジェクトのコントロールを失ったときに誘発する能力
(6)プレイヤーがある次元からプレインズウォークしたときに誘発する能力

難しい文章のままですが、それっぽいのは(1)だけですね。
では《引き裂かれし永劫、エムラクール》のPIG能力は(1)に該当するかというと、こんなルールがあります。

カードが特定の領域に「いずれかの領域から/from anywhere」置かれたことによって誘発する能力は、そのオブジェクトが戦場から移動したとしても、戦場を離れた時の能力としては扱わない。(CR603.6c)

・「いずれかの領域から」って書いてある誘発型能力は、戦場を離れた時の能力じゃないよ。

《引き裂かれし永劫、エムラクール》のPIG能力には、「いずれかの領域から」と書いてあります。よって、(1)には該当しません。
つまり、《引き裂かれし永劫、エムラクール》のPIG能力が誘発するかどうかは、例外的な能力ではないので、イベントの直後の状態(コマB)を参考に決める…ということ。

で、どうなるの?

《引き裂かれし永劫、エムラクール》になった《クローン》が墓地に置かれる、というイベントの直後の状態(コマB)を見てみましょう。
墓地に置かれた《クローン》があります。それはもはや《引き裂かれし永劫、エムラクール》のコピーではないので、《引き裂かれし永劫、エムラクール》のPIG能力を持っていません。コマBだけをよく見ても、誘発しそうな能力がどこにもありません。

つまり、参考にするゲームの状態の中に、誘発しそうなPIG能力は存在しないので、PIG能力は誘発しない…ということ。

おまけ

《荒廃鋼の巨像》のコピーになった《クローン》が墓地に置かれる場合、ライブラリーに戻る能力は誘発します。
Blightsteel Colossus / 荒廃鋼の巨像 (12)
アーティファクト クリーチャー ― ゴーレム(Golem)
トランプル、感染
荒廃鋼の巨像は破壊されない。
荒廃鋼の巨像がいずれかの領域からいずれかの墓地に置かれる場合、代わりに荒廃鋼の巨像を公開し、それをオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
11/11

紛らわしいですが、《荒廃鋼の巨像》のライブラリーに戻る能力はPIG能力ではありません。「代わりに」と書いてあるので置換効果です。
なので、誘発するかどうかはイベントの直前か直後を…ということは全く関係ありません。「墓地に置かれる」というイベントが「公開し、ライブラリーに入れて切り直す」というイベントに置換されます。
(置換効果については、「《安らかなる眠り》について」(http://funloving.diarynote.jp/201304152155459874/)に詳しく書きましたので、そちらへどうぞ。)

○ FLの感想

FLは最初、「墓地に置かれたとき」って書いてある能力は全部一緒だと思っていて、こんなに奥が深い能力だなんて思いもしませんでした。
だから、PIG能力で難しいことにぶつかるたび、「こんな難しさもあるんだ…」と毎回ビックリします。特に《クローン》絡みの話は、今でも難しくて頭がクラクラするくらいです。このメモも、うまく書けたかどうか自信がありません。
でも、まだまだFLの知らないPIG能力の難しさはたくさんあるでしょう。これからもたくさん頭を使います。
まずは頑張ってこれを覚えて、正しくMtGを遊び尽くしたいです。

それではFLでした。

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